分子内分泌学研究分野

オープンイノベーション領域
ホルモンによる生体機能調節機序の解明
特任教授 福本 誠二
fukumoto-tky@umin.ac.jp

1982年 東京大学医学部医学科 卒業
1990年 東京大学大学院医学系研究科 修了
1990年 メルボルン大学 訪問研究員
1993年 東京大学 助手
1998年 東京大学 講師
2014年 徳島大学藤井節郎記念医科学センター
2016年 徳島大学先端酵素学研究所 特任教授

研究概要

 多細胞生物では、多様な細胞が協調しつつ独自の機能を発揮することで生命を維持しています。このため生体内では、他細胞の機能を調節する様々な手段が使用されています。遠隔細胞の機能調節方法の代用的なものが、神経系による制御とホルモンによる機能調節です。ペプチドホルモンやカテコラミンは細胞膜受容体に結合することにより作用を発揮するのに対し、ステロイドホルモンや1,25-水酸化ビタミンD[1,25(OH)2D]は核内受容体を介して作用を発揮します。

核内受容体スーパーファミリーの機能解析

 1,25(OH)2Dは、ビタミンD受容体(vitamin D receptor: VDR)に結合し、核内受容体型転写因子として遺伝子発現を調節します。1,25(OH)2Dは、腸管カルシウム吸収や腎遠位尿細管カルシウム再吸収の促進などにより、血中カルシウム濃度を上昇させるカルシウム調節ホルモンとして機能しています。一方VDRは、腸管や腎臓に加え、皮膚や筋肉など多くの組織に発現が認められています。従ってVDRは、カルシウム代謝調節以外の多様な作用を有しているものと考えられています。特に皮膚に関しては、VDR遺伝子変異によるビタミンD依存症2型患者やVDRノックアウトマウスでの著しい脱毛が知られています。また、ビタミンD欠乏と筋力低下や転倒との関連も報告されています。そこで我々は、皮膚や筋肉特異的なVDRノックアウトマウスを作成、解析することで、これらの組織におけるVDRの標的分子を同定し、VDRの作用を解明することを目的としています。既に皮膚特異的VDRノックアウトマウスでの網羅的遺伝子発現解析から、VDRの新たな標的遺伝子が同定されおり、現在これらの遺伝子産物の機能解析を進めています。これらの研究で得られる知見は、活性型ビタミンD3製剤が治療薬として応用されている乾癬等の慢性炎症性皮膚疾患に加え、加齢に伴う脱毛を含む皮膚疾患、不動や加齢に伴うサルコペニアへの新たな治療標的の同定に繋がるものと期待しています。加えて、糖代謝調節作用や抗炎症作用などを有するグルココルチコイドの受容体に関しては、特に解糖系代謝産物がもたらす翻訳後修飾の変動に着目し、代謝状態がグルココルチコイド感受性を制御する機構について解析しています(図左)。このグルココルチコイド受容体の解析には、質量分析装置を利用したプロテオミクス解析を用い、翻訳後修飾の種類や部位の同定から分子情報を解明します。将来的にこれらの知見は、グルココルチコイド作用をコントロールする方法の開発に繋がると考えています。

細胞膜受容体を介するホルモン作用調節機序の検討

 細胞外電解質濃度が一定の範囲に維持されていることは、すべての細胞の機能維持に必須です。従来血中カルシウム濃度の維持には、カルシウム調節ホルモンである副甲状腺ホルモンや1,25(OH)2Dの作用が必要であることが知られていました。一方血中リン濃度の異常は、くる病や骨軟化症、異所性石灰化などの原因となります。しかし血中リン濃度がどのような機序により調節されているのかは明らかではありませんでした。我々は、骨で産生される線維芽細胞増殖因子23(fibroblast growth factor 23:FGF23)が、Klotho-FGF受容体複合体に結合することにより作用を発揮するリン調節ホルモンであること(図右)、FGF23作用の調節がFGF23作用異常による疾患の治療に有用であることなどを報告してきました。しかし、現状ではFGF23の産生調節機序や作用機序の詳細には、不明な点が多く残されています。我々は、FGF23蛋白の翻訳後調節に注目し、FGF23作用調節機序、生体のリン感知機構の解明を目的として検討を進めています。

(左)脂溶性ビタミンやステロイドホルモンをリガンドとする核内受容体は、組織特異的な標的遺伝子の発現を介して様々な生体機能を調節する。その組織特異的な制御にはリガンドのみならず、細胞外シグナル分子や細胞内の代謝状態が関与していると考えられる。
(右) 骨で産生されるFGF23は、Klotho-FGF受容体複合体に結合することにより作用を発揮する。

最近の主要論文

  1. Sawatsubashi S, Joko Y, Fukumoto S, Matsumoto T, Sugano SS.
    Development of versatile non-homologous end joining-based knock-in module for genome editing.
    Sci Rep. 8: 593 (2018)
  2. Kinoshita Y, Fukumoto S.
    X-linked hypophosphatemia and FGF23-related hypophosphatemic diseases: Prospect for new treatment.
    Endocr Rev. 39: 274-291 (2018)
  3. Dong B, Endo I, Ohnishi Y, Kondo T, Hasegawa T, Amizuka N, Kiyonari H, Shioi G, Abe M, Fukumoto S, Matsumoto T.
    Calcilytic ameliorates abnormalities of mutant calcium-sensing receptor (CaSR) knock-in mice mimicking autosomal dominant hypocalcemia (ADH).
    J Bone Miner Res. 30: 1980-93 (2015)
  4. Kinoshita Y, Hori M, Taguchi M, Watanabe S, Fukumoto S.
    Functional activities of mutant calcium-sensing receptors determine clinical presentations in patients with autosomal dominant hypocalcemia.
    J Clin Endocrinol Metab. 99: E363-8 (2014)
  5. Sawatsubashi S, Murata T, Lim J, Fujiki R, Ito S, Suzuki E, Tanabe M, Zhao Y, Kimura S, Fujiyama S, Ueda T, Umetsu D, Ito T, Takeyama K, Kato S.
    A histone chaperone, DEK, transcriptionally coactivates a nuclear receptor.
    Genes Dev. 24: 159-70 (2010)

スタッフ

特任講師:沢津橋 俊

2005年 東京大学分子細胞生物学研究所 博士研究員
2006年 科学技術振興機構ERATO 研究員
2010年 群馬大学生体調節研究所 助教
2014年 現職(2015年より特任講師)

技術補佐員:坂井 利佳
技術補佐員:三浦 直子