免疫病態学分野

次世代酵素学研究領域
疾患モデルマウスを用いた自己免疫疾患の病態解析
教授 松本 満
mitsuru@tokushima-u.ac.jp

1983年 愛媛大学医学部附属病院(第一内科) 医員
1988年 愛媛大学大学院医学研究科博士課程 修了
1989年 愛媛大学医学部附属病院(第一内科) 助手
1993-1996年 米国ワシントン大学医学部 研究員
1998年 愛媛大学医学部第一内科 助教授
1998年 徳島大学分子酵素学研究センター 教授
2016年 徳島大学先端酵素学研究所 教授

研究概要

 私達の身体には、細菌やウイルスといった外敵の侵入から身を守る手段として免疫システムが備わっている。ところが、何らかの原因により免疫系が自分自身の組織や臓器に攻撃をしかけるようになり、自己免疫疾患という難治性の病態が発生する。原因不明の難病である自己免疫疾患の病態を明らかにすることは、免疫システムの根幹をなす「自己・非自己の識別機構」の作動原理を理解することと、ほぼ同義である。とりわけ、胸腺における自己反応性T細胞の除去(負の選択:negative selection)と制御性T細胞(regulatory T cell)の産生は中枢性自己寛容(central tolerance)の要点であり、それらのメカニズムの全貌解明は免疫学における大きな課題である。こうした理由から、比較的まれな疾患であるにもかかわらず、Aire欠損症は自己免疫疾患の病態解明に重要な役割をはたすと考えられている。

 Aireは胸腺の間質(stroma)を構成する髄質上皮細胞(medullary thymic epithelial cell: mTEC)に発現する転写因子で、北欧、なかでもフィンランドに多くの疾患家系が存在する遺伝性自己免疫疾患[自己免疫性多腺性内分泌疾患I型(autoimmune polyendocrinopathy-candidiasis-ectodermal dystrophy:APECED)]の原因遺伝子である。Aire遺伝子のクローニングから約20年が経過するが、未だに自己寛容成立過程におけるAireの真の役割については必ずしも統一見解に達しているとは言い難い。私どもはAireがmTECの分化プロセスにおいて重要な役割を担い、それによって自己寛容の成立にはたらいているという仮説を立てて、その検証に取り組んでいる。Aireの機能を明らかにする目的で、Aire遺伝子を標的としたさまざまな遺伝子改変マウスを樹立し、解析を行っている。Aire欠損症は実際に患者が存在するヒトの病気の原因遺伝子あることから、Aire遺伝子改変マウスの作製と解析によって、自己免疫疾患の研究においても、真の実験医学が可能になったと言える。

図A Nisikawa Y, et al. J. Immunol.192: 2585 (2014)

図B Yano M, et al. J. Exp. Med. 205: 2827 (2008)

遺伝子改変マウスを用いたAire発現細胞の可視化
Aire遺伝子座に蛍光タンパク質であるGFP(green fluorescence protein)遺伝子を挿入したノックインマウスの胸腺を蛍光顕微鏡によって観察した。胸腺髄質上皮細胞のマーカーであるKeratin 5(赤)との同時染色によって、Aire発現細胞(緑)が胸腺髄質に存在することが分かる(図A)。Aire欠損状態でのAire発現細胞は丸みを帯びた未熟な形態をとる(図B)。このことから、Aireが胸腺髄質上皮細胞の分化プロセスに重要な役割を果たすと考えられる。

最近の主要論文

  1. Morimoto, J, Nishikawa, Y, Kakimoto, T, et al.
    Aire controls in trans the production of medullary thymic epithelial cells expressing Ly-6C/Ly-6G
    J. Immunol. (21018) in press.
  2. Nishijima, H, Kajimoto T, Matsuoka Y, et al.
    Paradoxical development of polymyositis-like autoimmunity through augmented expression of autoimmune regulator (AIRE).
    J. Autoimmunity 86: 75-92 (2018)
  3. Mouri Y, Ueda Y, Yamano T, et al.
    Mode of tolerance induction and requirement for Aire are governed by the cell types that express self-antigen and those that present antigen.
    J. Immunol. 199: 3959-71 (2017)
  4. Matsumoto M.
    Switching on the Aire conditioner.
    Eur. J. Immunol. 195: 4641-9 (2015)
  5. Kawano H, Nishijima, H, Morimoto J, et al.
    Aire expression is inherent to most medullary thymic epithelial cells during their differentiation program.
    J. Immunol. 195: 5149-58 (2015)
  6. Nishijima H, Kitano S, Miyachi H, et al.
    Ectopic Aire expression in the thymic cortex reveals inherent properties of Aire as a tolerogenic factor within the medulla.
    J. Immunol. 195: 4641-9 (2015)

スタッフ

助教:西嶋 仁

2002年 九州大学大学院 学術研究員
2005年 国立遺伝学研究所 助教
2010年 徳島大学疾患酵素学研究センター 助教
2016年 徳島大学先端酵素学研究所 助教

助教:森本 純子

2004-2007年 米国ワシントン州立大学 研究員
2007年 北海道大学遺伝子病制御研究所 助教
2013年 徳島大学疾患酵素学研究センター 助教
2016年 徳島大学先端酵素学研究所 助教

助教:宮澤 龍一郎

2019年 徳島大学先端酵素学研究所 助教