免疫制御学分野

プロテオゲノム研究領域
免疫補助受容体による免疫制御機構の解明と新規免疫制御法の開発
教授 岡崎 拓
tokazaki@genome.tokushima-u.ac.jp

2003年 京都大学大学院博士課程修了 医学博士
2003年 京都大学大学院医学研究科 助手
2004年 京都大学大学院医学研究科 21世紀COE特任助教授
2008年 徳島大学疾患ゲノム研究センター 教授
2016年 徳島大学先端酵素学研究所 教授

研究概要

 分子生物学の発達により様々な分子が発見され、個々の機能が詳細に解析されてきましたが、分子間の関連はあまりわかっていません。ヒトの病気のほとんどは複数の遺伝子が関与する多遺伝子疾患であるため、病態の解明には分子群の相互作用を理解することが必要不可欠です。我々の研究室では多遺伝子疾患の一つである自己免疫疾患に注目し、自己免疫疾患の発症に関与する遺伝子を網羅的に探索し、各遺伝子間の相互作用を解析することにより疾患発症機序を分子レベルで解明することを目標としております。自己免疫応答の制御機構が解明できれば、やはり不適切な免疫応答であるアレルギー疾患や移植片の拒絶、一種の自己免疫応答である腫瘍免疫、自己の細胞に感染して毒性を発揮するウイルス感染症等についても、その制御機構を解明するとともに、効果的な治療法を開発することが可能となると期待されます。

自己免疫疾患の遺伝解析

 我々は、PD-1(Programmed cell death 1)という分子の解析を主に行なっております。PD-1は活性化したリンパ球に発現する免疫補助受容体であり、リガンドであるPD-L1およびPD-L2と結合してリンパ球の活性化を抑制します。PD-1欠損マウスが、マウスの系統により異なる種類の自己免疫疾患を自然発症することから、連鎖解析により系統特異的な自己免疫素因の解明を試みております。また、飼育しているPD-1欠損マウスの中に見出した、より重症の自己免疫疾患を発症するマウスをライン化して解析したところ、LAG-3と言う別の遺伝子に突然変異を同定し、その変異が自己免疫疾患発症の原因であることを明らかとしております。LAG-3もPD-1と同様に、活性化したリンパ球の細胞表面に発現する抑制性の免疫補助受容体だと考えられておりますが、詳しくは分かっておりません。そこで、LAG-3の機能をPD-1との関連に着目して解析しております。

リンパ球活性化制御メカニズムの解明

 リンパ球の活性化は、抗原受容体刺激に加え、PD-1やLAG-3をはじめとした様々な免疫補助受容体によって厳密に制御されています。同一の抗原に対する免疫応答であっても、リンパ球は毎回同じように活性化するのではなく、状況に応じて応答しない場合、不可逆的な不応答状態に至る場合、長期の免疫記憶を担う場合、免疫抑制活性を獲得する場合など様々です。その決定において、免疫補助受容体が重要な役割を担っていることが明らかとなってきていますが、その詳細は依然不明です。そこで、PD-1やLAG-3を中心に、複数の免疫補助受容体による協調的な制御ネットワークの解明を試みております。

がん、自己免疫疾患の治療

 PD-1は自己に対する不適切な免疫応答を抑制する分子ですが、がん細胞やウイルス感染細胞にその機能が悪用されていることが明らかとなってきました。すなわち、一部のがん細胞やウイルス感染細胞がPD-1のリガンドを発現することによりリンパ球を抑制し、宿主の免疫監視機構から逃れているのです。近年、がんの治療においてPD-1阻害抗体およびPD-L1阻害抗体が劇的な効果を示したことから、世界的に大きな注目を集めております。そこで、より効果的かつ副作用の少ないがん免疫療法の開発や、免疫応答を人為的に制御することにより自己免疫疾患やアレルギー疾患等、様々な疾患を治療する方法の開発を目的とした研究を、日本医療研究開発機構(AMED)が推進する革新的バイオ医薬品創出基盤技術開発事業の支援を受けて実施しています。

PD-1欠損マウスが発症する自己免疫疾患
PD-1欠損下マウスは、マウスの系統により異なる種類の自己免疫疾患を自然発症します。また、他の遺伝子変異が重なること等により、自己免疫症状が多彩に変化します。各系統のマウスが有する自己免疫素因が異なるために、PD-1欠損下で発症する自己免疫疾患の種類が変化すると考えられることから、連鎖解析により系統特異的な自己免疫素因の解明を試みています。

最近の主要論文

  1. Shimizu K, Nakajima A, Sudo K, Liu Y, Mizoroki A, Ikarashi T, Horai R, Kakuta S, Watanabe T, Iwakura Y.
    IL-1 receptor type 2 suppresses collagen-induced arthritis by inhibiting IL-1 signal on macrophages.
    J Immunol. 194:3156-3168 (2015).
  2. Maruhashi T, Kaifu T, Yabe R, Seno A, Chung SH, Fujikado N, Iwakura Y.
    DCIR maintains bone homeostasis by regulating IFN-γ production in T cells.
    J Immunol. 194:5681-5691 (2015).
  3. Okazaki T, Chikuma S, Iwai Y, Fagarasan S, Honjo T.
    A rheostat for immune responses: the unique properties of PD-1 and their advantages for clinical application.
    Nat Immunol. 14:1212-1218 (2013).
  4. Okazaki IM, Okawa K, Kobayashi M, Yoshikawa K, Kawamoto S, Nagaoka H, Shinkura R, Kitawaki Y, Taniguchi H, Natsume T, Iemura S, Honjo T.
    Histone chaperone Spt6 is required for class switch recombination but not somatic hypermutation.
    Proc Natl Acad Sci USA. 108:7920-7925 (2011).
  5. Okazaki T, Okazaki IM, Wang J, Sugiura D, Nakaki F, Yoshida T, Kato Y, Fagarasan S, Muramatsu M, Eto T, Hioki K, Honjo T.
    PD-1 and LAG-3 inhibitory co-receptors act synergistically to prevent autoimmunity in mice.
    J Exp Med. 208:395-407 (2011).

スタッフ

准教授:岡崎 一美

2003年 京都大学大学院博士課程修了 医学博士
2007年 京都大学大学院医学研究科 助教
2008年 徳島大学疾患ゲノム研究センター 助教
2012年 現職

特任助教:杉浦 大祐

2009年 東京大学大学院博士課程修了 薬学博士
2009年 現職

特任助教:丸橋 拓海

2013年 東京大学大学院博士課程修了 理学博士
2013年 現職

日本学術振興会
特別研究員:清水 謙次

2015年 東京大学大学院博士課程修了 生命科学博士
2015年 徳島大学疾患プロテオゲノム研究センター 特任研究員
2016年 現職