診療分野
研究概要
診療分野では、主に3つの臨床プロジェクトを推進しています。
第一にアンチエイジング医療センターを中心に、先進性の高い糖尿病治療法を導入し、徳島大学の糖尿病診療を国内トップレベルにし、多くの糖尿病専門医や療養指導士など人材育成を進めること。次に糖尿病診療に関連する多くの診療科、医療機関間での連携を行うICT地域医療連携システム「徳島糖尿病克服ネットワーク」を構築し、徳島県下でICTを活用した最適な糖尿病治療法を普及させること。第三に糖尿病およびメタボリックシンドロームに注目したメディカルツーリズムを徳島大学および県下医療機関で成功させることです。
一方、研究面では膵β細胞傷害の早期診断法の確立、腎症や筋障害など糖尿病合併症のバイオマーカ探索から最適な治療法の開発をめざした研究を進めています。臨床と研究のバランスの取れた研究室として、地域に向けて糖尿病対策をけん引し、世界に向けて優れた糖尿病研究をどんどん発信していきます。
スタッフ紹介
日本糖尿病学会専門医・指導医
松久 宗英
研究テーマ
「糖の流れ」調節因子の解明、先進糖尿病治療、ICT地域医療連携
「糖の流れ」調節因子の解明、先進糖尿病治療、ICT地域医療連携
略歴
昭和62年 | 岡山大学医学部卒業 |
昭和62年 | 大阪大学医学部第一内科入局 |
平成 5年~7年 | カナダトロント大学医学部生理学教室 客員研究員 |
平成15年 | 大阪大学大学院医学系研究科病態情報内科学 助手 |
平成21年 | 大阪大学大学院内分泌代謝内科学 講師 |
平成22年 | 徳島大学糖尿病臨床・研究開発センター 特任教授 |
平成26年 | 徳島大学糖尿病臨床・研究開発センター センター長 徳島大学病院アンチエイジング医療センター センター長 |
平成28年 | 徳島大学先端酵素学研究所糖尿病臨床・研究開発センター(改組) センター長・特任教授 |
平成29年 | 徳島大学先端酵素学研究所糖尿病臨床・研究開発センター センター長・教授 |
令和5年 | 徳島大学先端酵素学研究所 所長 |
役職
徳島県糖尿病協会 会長
徳島県医師会糖尿病対策班 副班長
一言
グローカルな課題「糖尿病」を克服するため、新しい知見と情報を地域から世界へ発信します。
黒田 暁生
専門分野
1型糖尿病、最先端1型糖尿病医療、ラーメン
1型糖尿病、最先端1型糖尿病医療、ラーメン
略歴
昭和57年9月 | 1型糖尿病発症 |
昭和63年3月 | 金蘭千里高等学校卒業 |
平成7年3月 | 東京医科歯科大学医学部医学科卒業 |
平成7年4月 | 大阪大学第一内科(病態情報内科学)糖尿病研究室入局 |
平成7年6月 | 関西労災病院内科研修医 |
平成9年6月 | 大阪船員保険病院内科医員 |
平成10年4月 | 大阪大学大学院病態情報内科学(第一内科)大学院入学 近畿膵移植適応検討委員会事務局 |
平成15年4月 | 大阪大学大学院病態情報内科学(第一内科)研究生 |
平成15年6月 | 関西労災病院内科医長 |
平成16年6月 | City of Hope National Medical Center/ Beckman Research Institute Department of Diabetes, Endocrinology, and Metabolismにて Research Fellow |
平成19年7月 | 大阪大学医学部附属病院内分泌・代謝内科医員 |
平成23年4月 | 徳島大学糖尿病臨床・研究開発センター 助教 |
平成28年6月 | 徳島大学先端酵素学研究所糖尿病臨床・研究開発センター 准教授 現在に至る |
一言
1型糖尿病とは35年以上の付き合いです。1型糖尿病発症前からの診断ツールの開発、1型糖尿病を発症した後の病気の管理法について基礎および臨床での最新の医療を探索しています。
明比 祐子
専門分野
内分泌・糖尿病・肥満症
内分泌・糖尿病・肥満症
略歴
昭和63年3月 | 大分医科大学(現、大分大学医学部)卒業、大分医科大学第一内科入局 |
平成10年4月 | 福岡大学臨床検査医学 入局 |
平成12年4月 | 福岡大学臨床検査医学 助手(助教)、血液・糖尿病内科兼務 |
平成20年4月 | 福岡大学内分泌・糖尿病内科 講師 |
平成23年4月 | 福岡大学内分泌・糖尿病内科 准教授 |
平成24年10月~現在 | 福岡大学内分泌・糖尿病内科 非常勤講師 |
平成27年1月~現在 | 徳島大学先端酵素学研究所糖尿病臨床・研究開発センター客員准教授 兼務 |
令和5年6月 |
社会医療法人天神会 新古賀病院 糖尿病・甲状腺・内分泌センター センター長 |
森 博康
専門分野
栄養学、運動生理学
栄養学、運動生理学
略歴
平成18年 | 鈴鹿医療科学大学保健衛生学部医療栄養学科卒業 |
平成20年 | 中京大学大学院体育学研究科運動生理学系博士前期課程修了 管理栄養士 |
平成26年 | 徳島大学先端酵素学研究所糖尿病臨床・研究開発センター 特任助教 |
平成31年 | 徳島大学先端酵素学研究所糖尿病臨床・研究開発センター 助教 |
令和5年 | 徳島大学先端酵素学研究所糖尿病臨床・研究開発センター 講師 |
受賞
- 第5回 日本リハビリテーション栄養年次学術集会・奨励賞
- 第9回 日本リハビリテーション栄養年次学術集会・最優秀演題賞
- 第50回 日本成人病(生活習慣病)学会・会長賞
- 第51回 日本成人病(生活習慣病)学会・会長賞
- 第54回 日本糖尿病学会中国四国支部若手研究奨励賞
- 第61回 日本糖尿病学会年次学術集会・医療スタッフ賞
- 平成30年度 日本栄養士会・全国栄養士大会ポスター賞
- 第39回 日本肥満学会 Kobe Award
一言
徳島県の糖尿病治療に貢献します。
市原 靖子
専門分野
高齢者の運動療法、インターバル速歩指導
高齢者の運動療法、インターバル速歩指導
略歴
平成7年3月 |
徳島県立城之内高校卒業 |
平成12年3月 |
茨城県立医療大学保健医療学部理学療法学科卒業 |
平成12年4月 ~令和2年3月 |
理学療法士として病院勤務 |
平成19年3月 |
信州大学大学院医学研究科医科学専攻修士課程卒業 |
令和2年5月 |
徳島大学先端酵素学研究所糖尿病臨床・研究開発センター 専門研究員 |
令和3年9月 |
信州大学大学院医学研究科医科学専攻博士課程卒業 |
一言
今まで培ってきた運動指導の専門性を糖尿病治療に役立てていきたいです。
谷口 諭
専門分野
医療情報
医療情報
略歴
平成19年 | 慶應義塾大学総合政策学部卒業 その後企業研修会社、英語学習、健康教育企業を経る。 |
平成26年9月 | 徳島大学先端酵素学研究所糖尿病臨床・研究開発センター 特任助教 |
平成30年4月 | 徳島大学先端酵素学研究所糖尿病臨床・研究開発センター 専門研究員 |
平成31年12月 | イリノイ大学シカゴ校応用健康科学部 健康情報学修士号取得 University of Illinois at Chicago College of Applied Health SciencesにてMaster of Science in Health Informatics取得 |
一言
糖尿病治療に取り組む医療者・患者をITで支援できるよう、努めてまいります。
医師
木下 智絵
出身:徳島県
所属:木下病院
専門分野:内科、糖尿病
好きな食べ物:筍、太刀魚
目標:最善を尽くす、次善を得る。
学生
諌山 晴奈
出身:熊本県
所属:徳島大学医学部医学科
学年:3年
好きな食べ物:アイス
目標:研究に関する知識・技術を身に着ける
医療連携システム
増加し続ける糖尿病患者に限られた医療資源で最良のケアを提供するには、医療者・コメディカルが地域で面として連携することが重要です。患者中心の連携を図ることを目的に、当センターでは情報通信システム(ICT)を用いた医療連携システムを構築するべく、次世代の糖尿病地域医療連携システム、患者の自己管理支援アプリケーション、遠隔栄養指導システムなどの研究開発を行っています。また、これらの取り組みから蓄積された糖尿病患者データを地域の糖尿病治療の質向上に結びつけるべく、医療データ分析にも取り組んでいる。これらのICTツールを患者ニーズ及び、かかりつけ医ニーズに組み合わせることで、個別化された治療の実現を目指します。
先進的糖尿病診療
糖尿病診療は、次々と有効な新薬や治療デバイスが登場し大きな変化の時期を迎えています。しかし、糖尿病患者の増加を抑制することはかなわず、また重篤な合併症患者も年々増加しています。これからの糖尿病診療には、適切な薬剤選択のための精度の高い糖尿病病態の評価法の開発、血管合併症のリスク解析と早期診断、先進医療機器や治療法の積極的導入が不可欠です。当研究室で取り組んでいる代表的な先進的糖尿病診療について紹介します。
1.人工膵島を用いた糖尿病の病態評価
2型糖尿病ではインスリン分泌能の低下とインスリン感受性の低下が病態の根幹となります。写真に示す日機装社製人工膵島(STG-55)を用いることで、経口ブドウ糖負荷試験などの病態評価に比して、2型糖尿病のインスリン分泌能およびインスリン感受性を高い精度で評価できます。本機器を用いた後述するContinuous Glucose Monitoring (CGM)の精度評価を行い最近報告いたしました(Kuroda et al. J Diabetes Sci Technol. 11:1096-1100, 2017)。
画像:日機装社製人工膵島(STG-55)
2.インスリンポンプ療法の最適化
1型糖尿病のインスリン皮下注射療法では基礎インスリンとして長時間作用型のインスリンを、食事用あるいは血糖補正用の追加インスリンとして超速効型インスリンを用いることが多いです。しかし、基礎インスリンの必要量は常に一定なものではなく、覚醒や運動によりダイナミックに変動します。このような変動にも対応できるのがインスリンポンプ療法です。インスリンポンプ療法では微量シリンジポンプの中に超速効型インスリンを入れて時間毎に注入量を変化するようなプログラムを入力することができます。当研究室では累計100例を超える症例で詳細に設定を検討して基礎インスリン必要量が1日総インスリン必要量の28%程度であることを見出し(Kuroda et al. Diabetes Care 34:1089-90, 2011)、さらに各食事に対する追加インスリン必要量を1日総インスリン必要量から算出する方法を見出しました(Kuroda et al. Diabetes Technol Ther 14:1077-80, 2012)。2016年から利用可能になったグルコース値がリアルタイムでわかるリアルタイムCGMとインスリンポンプを組み合わせたSensor Augmented Pump療法やFlash Glucose Monitoringを用いた治療も積極的に行っております。
3.膵β細胞由来遊離DNAの検出
ヒト膵β細胞のインスリン遺伝子に含まれるすべてのCpGアイランドという配列において他の体細胞と異なり特異的に脱メチル化状態であることが知られています(Kuroda et al. PLoS One. 4: e6953, 2009)。1型糖尿病では大部分の膵β細胞が特異的に破壊された結果高血糖を呈する疾患です。循環血液中からこれらの配列を特異的に認識して検出することで膵β細胞の破壊を非侵襲的に評価する技術を当研究室で発明・特許出願いたしました。この方法によって1型糖尿病発症の予知、あるいは膵臓移植、膵島移植時の臓器あるいは組織傷害の評価が可能になることが期待されます。
以上のように、当研究室では糖尿病診療の明日を変える成果を打ち出していきます。
糖尿病合併症のバイオマーカと治療の創出
1.糖尿病性筋障害(サルコペニア、ダイナペニア)
糖尿病の合併症として網膜症や腎症といった細小血管症や動脈硬化症(大血管症)があげられます。一方、本邦は超高齢社会に突入し、高齢者糖尿病の新しい合併症として認知症や骨粗鬆症、サルコペニアといった老年症候群が急増しています。我々は1型糖尿病において終末糖化産物の蓄積がサルコペニア合併に関与し、さらには下肢筋力が先行的に低下するダイナペニアを顕著に認めることを報告しました(Mori H et al. J Diabetes Investig. 2017)。現在は、糖尿病患者におけるダイナぺニアとサルコペニアの関係を明らかにするため、多施設共同研究:Impact of Diabetes Mellitus on Dynapenia Study (iDIAMOND Study)を開始し、糖尿病性筋障害の診断基準の適正化とリスク因子を検証しています。糖尿病治療の進歩と共に増加する高齢糖尿病患者さんへ、最適な糖尿病ケアを提案していきます。
2.急速進行性の糖尿病腎症
徳島県は人工透析の患者数が全国ワーストワンです。人工透析の主要原因は糖尿病腎症であり、県内での糖尿病腎症重症化予防の対策は喫緊の課題です。なかでも食塩摂取量や内臓脂肪面積が多い症例で、腎機能の急速低下が散見されます。現在、我々は糖尿病患者さんを対象に推定食塩摂取量と年間の腎機能変化(eGFR)との関連について追跡調査を行い、食事療法を中心とした減塩と適正な体重管理の重要性について検証を行っています。また、糖尿病性腎症を合併する早期腎症マーカーの探索的検証も開始しました。