2009年 大阪大学大学院生命機能研究科博士課程修了
2009年 大阪大学大学院生命機能研究科 助教
2016年 マックスプランク生物物理化学研究所 博士研究員
2019年 九州大学大学院医学研究院 特任助教
2020年 現職
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2005年 大阪大学大学院理学研究科 博士後期課程修了
2005年 大阪大学大学院生命機能研究科 特任助手
2008年 大阪大学大学院生命機能研究科 助教
2013年 徳島大学藤井節郎記念医科学センター 初期発生研究分野 助教
2017年 徳島大学先端酵素学研究所 教授
脊椎動物の初期の発生において最初に形成されるのが頭部の組織です。そののち、体幹部の組織が発生の進行とともに頸部から尾部にむかい段階的に形成されます。マウスの胚においては、妊娠7~8日目において頭部の組織が形成され、つづいて、体幹部(および、尾部)の組織が約5日(妊娠8~13日目)をかけて形成されます。この時期の胚では、神経管を中心として側方に体節中胚葉、中間中胚葉、側板中胚葉が形成されます。また、神経管の腹側には脊索および内胚葉が形成されます。こういった体幹部および尾部の段階的な形成は脊椎動物をつうじ保存されています。ニワトリの胚においては、孵卵18~22時間の時期に頭部が形成され、体幹部や尾部は、頭部が形成されたのち、約6日をかけて段階的に形成されます。このように、体幹部の組織が頸部から尾部にかけて段階的に付加されながら形成される過程を体軸伸長とよびます。体軸伸長において、体幹部や尾部の組織は原腸陥入の場である原条とその周辺のエピブラスト(胚盤葉上層)あるいは尾芽から供給される細胞により形成されます。私たちは、これまで神経板(中枢神経系の前駆体)が産み出される仕組みを具体例として、原腸陥入期にエピブラスト(胚盤葉上層=すべての体細胞の前駆体)から多様な体細胞系列が産み出される仕組みを研究してきました。
私たちは、転写因子SOX2が神経板の発生開始とともに発現することに注目して、その転写制御機構の研究を行い、次のことを示しました。 1. 体幹部・尾部の神経板と中胚葉は、原腸陥入の場である原条の両側に分布する「体軸幹細胞」から産み出されます。 2. 体軸幹細胞から、神経板と中胚葉のいずれが産み出されるかは、転写因子SOX2とTBX6の活性によって決定されます。高校の生物の教科書には、“原腸胚で生じた3種類の胚葉からいろいろな組織が形成される”と記されています。そして、“外胚葉からは神経管と表皮が分化し、中胚葉からは骨や筋肉(体節中胚葉)が分化する”と書かれています。しかしながら私たちが行った研究から、体幹部の神経管および体節中胚葉は共通の前駆体細胞である体軸幹細胞から分化することを明らかにしました。これらの研究成果は、けっして三胚葉そのものを否定するものではありません。分化した組織はその位置に応じていずれかの胚葉に分類されます。つまり、三胚葉とはあくまで組織の解剖学的な位置の記述であって、細胞運命の分岐ではありません。私たちは、体軸幹細胞という新しい細胞運命の分岐点の発見が、同じ時期に分化する多様な組織の起源を再考するきっかけになると考えています。
現在、発生生物学分野では、体軸幹細胞の維持と分化の制御の仕組みと、原腸陥入期に多様な体細胞系列が産み出される仕組みを、マウス胚、ニワトリ胚、培養細胞をもちいて明らかにしようと研究を行っています。
図は、将来の体幹部・尾部の胚組織で蛍光タンパクを発現する遺伝子改変マウス。私たちは、体軸幹細胞の制御に関与する遺伝子の機能を欠失させることや、体軸幹細胞から産み出される細胞系列を標識することで解析を進めています。
原腸陥入にともなう細胞の挙動を追跡。ニワトリ胚は、卵生であり、また、卵から取り出して培養することが可能であることから、胚発生の経時的な変化を観察することが容易にできます。原腸陥入にともなって産み出される多様な細胞系列が、胚の中でどのように再配置されるのかを観察し、その過程に関わる仕組みを解析しています。
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