2010年 東北大学大学院農学研究科博士課程修了 農学博士
2011年 徳島大学疾患ゲノム研究センター 特任助教
2013年 徳島大学疾患プロテオゲノム研究センター 助教
2019年 現職
2016年 岡山大学大学院自然科学研究科博士後期課程修了 理学博士
2016年 岡山大学ナノバイオ標的医療センター 研究員
2017年 徳島大学先端酵素学研究所 特任研究員
2019年 現職
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2001年 熊本大学大学院 博士課程修了 医学博士
2001年 熊本大学医学部附属病院代謝内科 医員
2003年 ニューヨーク大学医学部スカボール研究所 研究員
2008年 徳島大学疾患ゲノム研究センター 教授
2010年 徳島大学糖尿病臨床・研究開発センター 糖尿病開発研究部門長(兼任)
2016年 徳島大学藤井節郎記念医科学センター センター長(兼任)
2016年 徳島大学先端酵素学研究所 教授
細胞のタンパク質合成工場である小胞体は、様々な要因で容易にその内部環境が影響を受けて、合成されるタンパク質の折り畳み異常を起こすことが明らかになり、これらをまとめて小胞体ストレスと呼んでいます。細胞は小胞体ストレスに適応するために、小胞体ストレス応答と呼ばれるゲノムにプログラムされた応答機構を持ちます。この応答は、最初にタンパク質の合成を止めて小胞体の負担を減らす翻訳抑制を一時的におこし、次にタンパク質の折り畳みを助ける分子シャペロンや折り畳み不全タンパク質を選別して分解する小胞体ストレス関連分解因子を誘導して、ストレスに適応できる小胞体へのリモデリングを起こします。それでも適応できないような重篤なストレス状態では、個体としての生存のためにストレスに適応できない細胞はアポトーシスを誘導して除外します。このように、小胞体ストレス応答は、時間・空間的に精緻で複雑な仕組みで構成されることがわかってきました。
近年では、小胞体ストレス応答経路の分子機構も次々と明らかになり、小胞体ストレスと疾患発症との関連が注目されています。我々は小胞体ストレスが糖尿病の発症に関与することを世界で初めて発見し、小胞体ストレス応答経路の分子機構についての研究を進めてきました。小胞体ストレスは、糖尿病以外にも、脳梗塞、虚血性心疾患、癌や神経変成疾患など様々な疾患の病態形成への関与が示唆されて大変注目を浴びています。そこで遺伝子改変マウスなどを用いて、小胞体ストレスを検出するシステムや小胞体ストレスシグナルのみを自在に出力できるシステムを作製しており、小胞体ストレス応答シグナルの生体機能調節における役割の解明を目指しています。作製した遺伝子改変マウスの表現型を明らかにすると同時に、マイクロアレイや次世代シーケンサーなどを用いた網羅的な遺伝子発現解析や質量分析機を用いたプロテオーム・メタボローム解析により集積する様々なオーミクス情報を統合して、生体機能制御における小胞体ストレス応答ネットワークの全容解明に取り組んでいます。さらに、小胞体ストレスや小胞体ストレス応答を制御する化合物の探索も行っており、小胞体ストレスが関与する疾患の克服を目指しています。
これまでの研究成果の概要
膵β細胞がインスリン分泌のために豊富な小胞体を持つことに着目して小胞体ストレスによる細胞障害と糖尿病発症の関係を細胞レベルで発見(PNAS 2001)したことが現在の研究の始まりで、次に個体レベルで小胞体ストレスによって糖尿病が発症することをAkitaマウスの解析で明らかにすることができました(JCI 2002)。またプロテオミクス的手法により小胞体タンパク質品質管理に関与する因子を同定し、その欠損で糖尿病発症となることも見出しました(Cell 2006 、EMBO J 2008)。さらに網羅的な遺伝子発現解析から、小胞体ストレス応答シグナルが肝臓では代謝制御シグナルとクロストークすること(Cell Metabolism 2008)や骨格筋ではホルモン産生を制御することで褐色脂肪組織でのエネルギー代謝を制御すること(FASEB J 2016)を発見してきました。これらの結果から、我々は小胞体ストレス応答には、小胞体でのタンパク質の折り畳み不全に適応するための古典的な小胞体ストレス応答と、小胞体でのタンパク質の折り畳みとは直接は関連せずに細胞機能を制御する非古典的な小胞体ストレス応答が存在することを新たに提唱しています。このように、小胞体ストレスと疾患発症の関係が明らかになるに従って、小胞体ストレスあるいは小胞体ストレス応答の制御により疾患を克服できる可能性が見えてきました。我々は、小胞体ストレス創薬を目指した創薬開発のプラットフォーム技術を開発しており、これまでに22万種の化合物ライブラリーから小胞体ストレスを緩和する科学シャペロンを同定(eLife 2019)してきました。今後さらに、小胞体ストレス関連疾患における発症・進展の分子機構を解明すると同時に創薬研究も進めていきます。
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